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そして、ある日、僕の意識はぷっつりと途切れた。
……でも、不思議だった。完全に意識が無くなる直前に、知らない女の子を見た気がしたから。その女の子は薄笑いを浮かべながら僕を見ていた。
眼を覚ますと、そこは病室だった。何年もの間見慣れた個室。
あれ、何で?
僕は……死んだ……んじゃないのかな?
その時、キィィ、と軋んでドアが開いた。けど、近くには誰もいない。まるで、見えない誰かが僕を外へ誘っているみたいだ。導かれるように、僕はベッドを出る。
驚くくらい身体が軽かった。まだ元気だった頃にひけをとらないくらい調子がいい。
病院を出るまで、誰にも会わなかった。辺りを静寂が包んでる。だけど、嫌じゃない。心地よい静けさだ。
ガラス貼りのドアの向こうは雲一つ無い快晴だった。どこまでも晴れ渡った空は気持ちがいい。いつも部屋の中からしか見れなかったこの風景
……綺麗だ。
何処とも無く歩いていたら、見慣れた背中が見えた。
「おーい、賢哉!」
少し背の低い少年、賢哉は振り向いて……そして口に銜えていたアイスを吹き出した。
「なっ……!? 望!? お前っ……なん、で……?」
……?
どうしたんだろ、賢哉そんなに血相変えて?
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