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「父さん……母さん……何で……」
朽ち果てた異形の雹重の上に陽炎の様に寄り添った二人……
「父さんが、私を呼んでくれたのよ。下を見て……」
雹重の肉体に無数に生えだした綺麗なぼたんにた花が咲く……
「……唐津名草……」
「そう……父さんは、道鏡と名乗る人から聞いたの……唐津名草を現世で咲かす方法を……答えは簡単……」
「……ま……まさか……父さんは……」
陽炎の母親は笑顔に涙を流しながら頷いた。
「外道に墜ちて、自身の肉体を苗床にして花を咲かすの……」
……では……雹重は、鬼門や地獄を遷し出すのではなく……その花の為に……
「えぇ……あの闇のものに乗っ取られるまで、雹重は、ただ無心に異形に変じる事のみに気を回していました。愛する私達の愛娘の為に……」
「…………」
狭喜は星切りを手放すと、その場に崩れた
「狭喜……お願い……唐津名草ごと父さんを斬って……」
「いや……いや……」
精神にきたのだろう。狭喜は泣き腫らした顔を更にくしゃくしゃにしながら、泣きわめいた
「父さんは何も……何も悪くない……私が……私のせいで……私が……」
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