赳歌

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さきイカをつばみながら、俺は郷歌に顔を向けた 「郷歌くん?大学のゼミの学生と助教授とは言え、年頃の女性が男性と一緒に旅行というのは、ご両親が心配するのではないかな?」 「ご心配なく、一人暮らしですから、家を空けても誰も心配しません。それにこれは、旅行ではありませんよ。大学のお金を使った。史料集めです。ですからゼミの参加している私が、着いてくるのは当たり前ですよ。」 「しかしな……………」 「何ですか?慶一先生は、私が着いてきては不都合な事でも?」 「いやまったく!!」 「では、教授の補佐を兼ねている先生の手伝いをさせてもらいますね?」 「………………」 くそぅ 理路整然な事を言いやがって 可愛くないったらありゃしない ますますビールが、不味くなる 反論することを止めた俺は、さきイカを食べながら目的地まで、黙ってビールを飲んでいた しかし自腹なのだが 酔う事も駄目と 結局二缶ビールを開けた所で止められ いつもの楽しみさえ半減していた
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