昼下がりの逃亡劇

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教訓。 非常時は下手に動くよりもかえってじっとしている方がいい。 あれ? これは迷子の鉄則だったか? それにあとプラスして。 四面楚歌。袋のネズミ。まな板の上の鯉。火曜サスペンスの崖、ただし刑事さんなし。 こんなところか。 とどのつまり囲まれたのだ。 ち。 「や……やっと追…いつき…ましたよ」 運動不足なのか追ってきたあんちゃんたちみんながみんな息が上がっていた。 あ、よく見れば腰元に剣を提げているな。 私と同じで走りにくそうだ。 実力行使もあり、か。ははは。 はぁ……パニック状態から目覚めて何だか頭が妙に冴えてきたな。 本当に、何で私ばっかりこんな目に? 「この紋章は解りますね?」 知らないって。 この国初めてだし、金属装飾とかデザインとか凝っていて格好いいとは思うが何のグループの紋章かなんて。 それとも店のロゴ? 「では我々とともに城へお戻り下さい」 城? 行くわけないだろ。いかがわしい店なんて。 以前イシュファースに強引に連れて行かれてお店のお姉さんたちはおろか、お客のおっちゃんたちにまで囲まれてあれやこれやとちやほやされたのは一体誰だと思っているんだ。  
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