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「…何?行けって頼まれたの?」
一瞬にして、冷静だった空気がびりびりしたものに変わる。
これがさっちゃんの、怖いところ。
でもタケは、別にさっちゃんを怒らせるのが怖いんじゃない。
「さっちゃんさ、タケのことよーくわかってるでしょ?あいつさ、言わないとわかんないよ。今も、なんでさっちゃんが怒ってるのかわからなくて、キョドってるし」
ほら、と目で食堂の入り口を見てやれば、こそりとのぞいてるタケの顔。
目がばっちりあえば、カチンと固まった。
「…いえないこともあるのよ」
…おや?さっちゃんらしくない。
声音が弱くなったから、うどんを食べようとフーフーし始めた俺は手を止めてさっちゃんを見た。
…うーん…
「…あ。もしかして。タケがモテる事、にちょっとヤキモチ妬いたとか?」
じーっと、さっちゃんを見ていたらなんとなくそんな気がした。
今日のさっちゃんは、いつもとちょっとだけ違うから。
何かね、ちょっと女の子っぽい。メイクとか服装とか若干だけどさ。
俺そういうの見るの好きだから。
「……なんで武にわからないことがあなたにわかるのかしら」
小さなため息をついた、さっちゃんの顔は…少し赤かった。
「俺、女の子見るの得意だからさ」
へへ、なんて笑えば、眉を下げて笑ったさっちゃん。
「ガラじゃないって思ったでしょ」
口先を尖らせる仕草なんて、女の子そのもので。
ちょっと新鮮。
「そんなことないよ。タケは鈍感っていうかさー…、さっちゃんのことになるといつものヘタレに輪をかけてヘタレになるから」
うんうんと頷いた俺。
「私のことだと?」
意外、というふうに目を大きくした彼女を見て驚いたのは俺だ。
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