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?「…ねえ…ねえ……くん…ねえ…」
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深い意識の中に落ちた暗闇のどこかから声が聞こえてくる。
聞き覚えのある声だ。
そして少し懐かしさを感じる声でもあった。
俺はその声に短い時間ながらも居たその空間から、
強制的に光の方へ引き寄せられて行った。
なにやら体が揺れている。
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?「ねえ…凜君…ねえ」
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呼びかける声が身近に感じられるようになって、俺はその主を確かめるように目を開けた。
目の前には例の転校生、遥の顔が俺に向けられていた。
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凜(こいつの声だったのか…)
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しかし、なんだ小声で…
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遥「あっ、やっと起きた」
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凜「…なに?」
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遥「だって凜君寝ちゃうんだもん、私教科書持ってないから解らないんだよ…」
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ああ…
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凜「…そういうことか、勝手に見れば良かったのに」
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軽く口元を拭きながら、教師の言っていたことを思い出した。
俺は体の下敷きにしていた教科書を机の上を滑らせるように差し出した。
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遥「そんなこと出来ないよ…」
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まあ、そうだろうな
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凜「良いって、どうせテスト前以外は寝てんだから」
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遥「凜君っていつも授業中寝てるの?」
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凜「そう」
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遥「でもそれじゃあ、授業が解らないんじゃないの?」
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凜「まあね、でも眠いんだよ」
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周りに聞こえないように小さく欠伸をする。
いつもなら昼頃まで寝てるんだが、
どうやら眠ってから一時間も経っていないみたいだ。
社会科の教師が宗教のようにぶつぶつと喋っている。
周りを見ると男子のほとんどがチラチラと俺を…いや、
遥に目を向けている。
女子は普段どおりに授業に集中していた。
浩二は俺と同じように寝ていて、一矢はノートと黒板に目を向けている。
優奈は…ん?
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優奈「……っ!…」
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目をそらされる。
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凜(なんだ朝から、俺は避けられてんのか?)
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いや、偶然かな。多分優奈も遥を見ていたんだろう。
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遥「またこれから寝るの?」
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遥の言葉に気を引かれた。
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凜「あ?…まあ、そのつもりだけど…」
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遥「ダメだよ、ちゃんと受けないと」
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凜「良いんだよ、いつもの事だ」
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お節介な奴だな…
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遥「何か昨日疲れるようなことでもしてたの?」
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俺が疲れる事で思い浮かぶのは1つしかなかった。
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