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春
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今日はとてもいい天気だった。
今の時期には桜はほとんど散っていたが、そのおかげで、地面には桜の長い絨毯が敷き詰められ、目の前には綺麗な景色が見えた。
鼻で息を吸えば清々しい朝の香りに満たされ、体は暖かい太陽に照らされて気持ち良く、見慣れた道は見慣れぬ道となり真新しく思えた。
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俺、杉浦 凛は、その道をのんびりした気持ちで歩き、そこから少し離れた宮園学園へと向かっていた。宮園学園とは格式の高い文武両道の進学校だ。一見真面目過ぎる印象なのだが、男子にも女子にも制服が人気で、その理由だけで入ってくる者も少なくはない。
周りを見ると俺と同じように登校する生徒の姿が見える。
いつもならその姿がチラホラとしか見えなくて、もっと遅い時間に駆けているんだが、今日からはそうはいかなくなったんだ。
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急遽親父の単身赴任が決まり、家事一切出来ない親父が心配だと母親が一緒についていく事に。もちろん俺は学校もあるし、一緒に行く気もなかった。
結構放任主義なとこもあって2人とも俺が残ることに反対しなかったから、現状1人暮らしをする事になったんだ。
でもこれには心配事もあり、洗濯や掃除はなんとかなるが、親父に似て料理はあまり作れないし、朝起きるのを母親に任せっきりだった俺にとって、朝はとてもつらい。
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昨日から両親は赴任先に移り、昨日の夜は目覚まし時計と携帯のアラームを5分おきにセットして寝た。
その為心配事もなくすんなり起きることが出来た俺は、朝の身仕度を済ませて食パンを一枚食べてからのんびりと家を出た。
徒歩20分程の道をいつもなら10分に短縮するように走っていたが、今日のゆったりした感覚は気持ち良かった。
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ゆっくり変わっていく通りなれた景色を眺めてみると、夕方に見る場所とは違って見えるようだった。
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凛『ふぁ~、まだ眠いけど、こういうのも良いかもな』
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背筋を伸ばすように空を見上げた。やっぱり慣れない時間に起きて、体はついていってないみたいだ。これが脳と体の違いってやつだな。
しかし、こんな気持ちの良い日だと欠伸も出やすくなるもんだ。
口に手を当てて、欠伸の反動で目に滲んだ涙を拭った。
そんな時、後ろから声をかけられた。
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謎の男『よう、 凛』
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立ち止まって振り向くと2人の見知った顔が近づいてくる。
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凛『なんだ、お前らか…』
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その言葉を聞き、2人の内の片割れが大げさなため息を吐く。
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