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「…席がえが始まりますよ。」
ジャックは静かに言った。
「…そうみたいですね。」
アリスも静かに言い返した。
アリスの席は…一番端っこだった。
隣には、大きなシルクハットを被った男子。
彼はうふふ、と不適に笑った。
「はじめまして、アリスさん」
「はじめまして…えぇと…」
「ルート、と言います。
以後、お見知りおきを。」
相手が私を知っていて、私が相手を知らない…
何だか妙だ。
「ルートさん、学部は?」
アリスはにこやかに聞いてみる。
ルートはまだ不適な笑みを浮かべてアリスを見ていた。
「理工学部です」
「わぁ、理工学部の受験、難しくなかったですか?」
「そんな事より…」
ルートは話を遮った。
アリスは目をぱちくりさせた。
「アリスさんの事、聞きたいです。」
ルートはうふふと悪意のない笑顔で笑っている。
「えっ…そんな大した人間ではないですよ」
ルートはふるふると頭を降った。
「聞きたいです」
もう一度繰り返した。
「………」
ジャックはつまらない、と言った顔でアリスとルートとの会話を見ていた。
「……って、聞いてますか、ジャックさん?」
飯炊女の仮装をした少女はジャックを現実世界に引き戻す。
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