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 3人の死人たちが搭乗手続きを終えた頃、駅の入り口が騒がしくなった。めったにないことである。   「ちょっと困ります。勝手な事を言われては」  そう言いながらやってきた郵便屋の側には、一人の少女がけんか腰について来ていた。小学校の高学年くらいの子である。   「お嬢さん、搭乗手続きですね」    駅員がそう言うと、少女はツカツカと駅員の前にやってきて、ひょうひょうとしている駅員の顔を見上げた。そのあからさまに怒っている表情に、駅員は少々戸惑った。   「あたしは乗らないわ」    少女はキッパリとそう言った。関西弁の男がものめずらしそうに少女の横へやってきて、面白そうに尋ねた。   「こりゃあまた、気の強いお嬢さんやな。どうして乗らんのんや?」 「あたし、まだ死にたくないの」    少女は間髪いれずに答えた。   「でも、あなたはもう死んでいるんですよ。召集状も渡しましたよね」    郵便屋が困ったように困ったようにそう言うと、少女はポケットからビリビリに破られた紙切れを出してばら撒いた。   「これのことかしら?」    手の中から全て紙切れがなくなると、少女は郵便屋から駅員に目を移した。駅員はもう一度少女に言った。   「早く搭乗手続きをしてくださいな」    少女は駅員の言葉を無視した。   「あたしを早く、元の世界へ戻らせてちょうだい」    慌てて広島弁の男が少女の側へ来た。   「おいおい、そんな口利いてると、あんたもわしみたいにボロボロ席になるで」    駅員も、郵便屋も困った顔をした。特別席にのる予定の女も尋ねた。   「乗らないんですか?」 「乗らない」    少女がきっぱりそう言うと、全員言葉を失って、しばらく沈黙の時間が流れた。
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