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 駅長と少女は、細い通路をゆっくりと進んでいった。途中何度か左や右に扉があったがそれらを通り過ぎ、先へ進んでいった。少女はほんの僅かだが、通路が少しずつ下っているのに気がついた。その間、2人は会話を交わさなかった。ただ駅長が歩き、少女がついて歩いた。    少女はだんだんイライラしてきて、立ち止まった。少女の足音が止まったのに気づいたのか、駅長も立ち止まって少女のほうを振り返った。   「そろそろついてもいい頃じゃない、もう!」    少女は駅長に、長々と歩かされる不満を言葉にした。   「おや、ここですよ」    駅長がそう言うと、確かに目の前に古ぼけた扉があり、通路はそこで途絶えていた。   『通路はもっと続いていたと思ったのに…』    少女は思ったが、そのことは口にしなかった。とにかく元の世界に戻ることが出来れば、すなわち生き返ることが出来ればそれでよかったからである。    駅長はポケットから鍵の束を取り出すと、その中から一本の鍵を選び出して扉の鍵穴に差し込んだ。   『カチャ』    と予想通りの音がして、鍵が開くのが分かった。   「この奥に、魂使いのおばあさんがいるはずです。そのおばあさんなら、あなたが元の世界に帰ることができる方法を教えてくれるはずです」    駅長は少女にそう言った。   「ありがとう」    少女は普通に、というよりはあまり感情のこもってない感じでお礼の言葉を口にした。   「それでは」    駅長はそう言うと、扉を手前に引いて開いた。真理子は光がこぼれてくることを予想していたが、扉のあちら側はこちら側とあまり変らない雰囲気だった。
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