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「あ、えっと…」
少女は驚いて一瞬言葉が詰まったが、すぐに気を取り直した。
「ちょっとその前にその人形たちなんとかしてよ、気持ち悪い!」
少女があからさまに不快な口調でそう言ったその瞬間、周りでガタゴトと音がした。
「えっ」
少女がそう口にしたと同時に、周りの人形がカタコトと起き上がった。
「ぼくの名前はチャッキー!気持ち悪いとはなんだ!」
「わたくしの名前はプースケであります。あなたのその態度は失礼であります」
立て続けに2体の人形が喋った。
「え、あ、人形が動いた!しゃべった!」
少女が驚いている間に、更に別の人形が起き上がった。
「あたしの名前はシャーリー。あなたが生きていないから、あたしたち動けるのよ」
少女は驚いて、老婆に文句を言った。
「もう、なんなのおばあさん。なんとかしてよ!」
すると、最後の一体の間の抜けた人形が起き上がった。
「ぼくの名前はとんちゃん。よろしく、真理子ちゃん!」
少女の名前はそう、確かに真理子だった。そして『真理子』は人形に、しかも中でも一番間の抜けた顔と格好をした人形に名前を呼ばれたことに腹が立った。
「うるさいわね!」
真理子はすぐに罵倒の言葉が口をついた。そして老婆にもう一度、人形をなんとかするよう言い放った。
「別に怖がることはない。あんただって死んでいるのに、動いたりしゃべったりできるじゃろう」
老婆の口調は穏やかだった。そしてそれは、自分の死を認めたくない真理子自身に改めて死んだことを自覚させる重たい言葉でもあった。
「それは…そうだけど…」
腑に落ちないものの他に言い返す言葉が見つからず、真理子は思わずそうつぶやいた。
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