―6―

3/10
前へ
/51ページ
次へ
 そこへ、未希と聡史と裕太がやってきた。   「ゴメン、待たせちゃったわね」    未希が笑って言った。裕太はチラっと腕時計を覗いて、それから真理子の方を見上げた。   「でもちゃんと2時半には着けたかな」 「いいや、正確には2時30分7秒でっせ」    真理子の耳元で死神が面白そうに囁いたが、真理子はジロっと睨んだだけで無視をした。   「ねえ、何して遊ぶ?」    聡史がそう言うと、明美が持ってきたスケッチブックを取り出した。   「絵描かない?」 そう言って明美はスケッチブックを開くと、そこにはいろんな景色が描かれていた。真理子も絵は得意な方だったが、明美のスケッチブックに描かれた絵は、小学生とは思えないほどの出来だった。   「結構うまいじゃない」    真理子が思わず誉めると、明美はにっこりと嬉しそうに笑った。   「明美ちゃんは絵を描くのが好きだから、大きくなったら画家になるのが夢なんだもんね」    聡史も嬉しそうに明美のことを説明した。   「そうよ。あたし、いっぱいいろんな風景描きたいんだ」    明美はスケッチブックを抱き締めて、みんなの方を向いてそう言った。   「夢…あるんだ…」    真理子は明美の顔を見て呟いた。   「おれだって、将来は野球の選手になるぜ」 裕太は自信満々に真理子に向って言った。   「真理子ちゃんは?」    未希が真理子に尋ねた。   「ピアノ…」    真理子はそう言うと、下を向いた。   「へえ、まりこちゃんピアノ弾けるんだ。今度聞かせてよ!」    聡史は嬉しそうに言った。   「うん、私のママのピアノ使ったらいいわ。私もママにピアノ教えてもらってるのよ」    ピアノが好きな未希も、嬉しそうにそう言った。    とっても上手に絵が描ける明美。自信満々に野球選手になるって言える裕太。自分と一緒で、ピアノが好きな未希。そして、人のことなのに素直に喜んでくれる聡史。そんな4人を前に、真理子は次の言葉が出てこなかった。
/51ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加