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「それでは皆さん、搭乗手続きをして下さい。ここでは皆さんの生きていた時の行いによって、それぞれパスポートを発行しますよ」
駅員がそう言うと、3人は順番に並んだ。
一番前に並んだ40代の女が駅員に尋ねた。
「行いってことは、やっぱり天国と地獄があるのでしょうか?」
少々不安そうな彼女に、駅員はにっこりと微笑んで答えた。
「いえいえ、ここにはそんなものはありませんよ。ただ、列車の席が違うだけです」
そう言うと駅員は、列車の席についての簡単な説明を3人に行った。
今度は一番後ろの50代の男が少し不安そうな顔をした。
「じゃったらわしはやっぱり…」
そうつぶやいた広島弁の男に、駅員は楽しそうに、そしてちょっとイジワルそうな顔つきで席を告げた。
「そうです!あなたはボロボロ席ですね」
駅員の答えに、広島弁の男は肩を落とした。
すると真ん中の40代の男が広島弁の男に声をかけた。
「まあそんなにガッカリすることはないわな。しばらく列車に乗っていれば、また生まれ変るっていうしな」
男は関西弁で慰めの言葉をかけると、先頭の女の横に並び、そして女の肩をポンポンとたたいた。女はにっこりして頷くと、駅員が関西弁の男に前にやって来た。
「あなたは普通席ですよ。悪いことはしていないんですが、別にいいこともねぇ」
ここの駅員は死人たちの反応が楽しみのようで、いつもこうやって楽しそうに席を告げたり、もったいぶって告げたりする。しかし死人たちも同じように楽しんでおり、決まって和やかな雰囲気で登場手続きが進んでいくのである。
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