記憶のカケラと真実の鎖

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転校してから一週間。 最近は(といっても初日から)三谷と下校するようになっていた。 話題、といっても大概は三谷が話を振り、俺がそれに相槌を打つ。また、今日も。 「…でさー、今日カッちゃんがね…」 (あ、小村の話) 三谷の話といえば、結構な割合でこの『小村 克美』の話が出てくる。 三谷の言う所では"僕の幼なじみ"らしいが、話で聞くばかりで、直接的な会話をしたコトが未だにない。 「―あれ、芦川?…芦川っ」 また宮原に聞いてみようか? 「おーい、芦川ー?…芦川~っ」 それとも三谷に? 「…あ・し・か・わ・っ!!」 「うわっ!?…な、何だよ」 …ああそうだ、三谷の存在忘れかけてた。 「何だよ、そんな上の空で」 「え?いや、別に何も」 「…っ、じゃあもう少し聞いてくれても良いじゃん!」 三谷が俺の腕をぐい、と引っ張る。 僅かに感じた痛みに顔をしかめる。 いや、その前、に。 瞬間、よく何かの番組で見る"タイムトリップ"の様にいきなり景色が、光景が、くるくる変わっていくのだ―。
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