82人が本棚に入れています
本棚に追加
あの後僕は芦川にサイダーをおごってもらって、二人で神社にいた。4時に学校を出たハズなのに、気が付けば時計は6時を回っていた。
(あああマズい…お母さんに怒られるかも!)
すっかり暗くなってしまった道を軽快なステップで走る亘。
その後ろを、影がひとつ。
それの髪が風に揺れる度に、一歩ずつ歩を進め、亘に近付く。
「…あ、れ?誰かいるの?」
亘が歩を止めたその刹那。
背後から手が伸びる。
それは亘の肩を掴んで、そのまま壁に押し付ける。
「…っ、」
一瞬だけ呼吸が止まる。顔がかなりの至近距離なのか、その相手の吐息が顔にかかる。
(両手が熱い)(ううん、冷たい?)
早すぎる展開についていけないんだろうか、感覚が麻痺している…。何秒かしてから気付いた、自分が押し付けられている壁の冷たさより、自分を拘束している手の方が冷たい。まるで氷を素手で触ってるような――
(怖い)(このヒトは誰?)(誰か)
(芦、川)
最初のコメントを投稿しよう!