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車がやっと一台通り、相手の顔がぼんやりと見えた。
黒いトレーナーで、亘よりほんの少し背が高い。襟足程でまとめられた長めのハチミツ色の髪が、夜風に揺れる。
「あ…?芦、川?」
『…やっと気付いた?』
芦川がはあ、とため息をつく。
「お前…何やって、」
『―わ た る』
…さっきもそうだった、何で、
(芦川は、僕を、名前で?)
「―何で、名前で呼ぶの?」
(『亘』、と)
『それはな、
オレは、"芦川 美鶴"じゃないからだよ?』
………え、は?
芦川なのに、芦川じゃない。
それって…一体、何?
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