私の住む街

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私はこんなに家の近くなのに全く気付かないうちに開業されているこの店に興味を持った。 と言うより不思議に思って入らずにはいられなかった。 煉瓦の坂道を歩いて統一された装飾の椅子やテーブルを通り過ぎ、ドアの前に立った。 このドアの向こう側にどんな店が開業されているんだろう。 このドアの向こう側にどんな店主がいるんだろう。 『万屋』ってどんな店なんだろう。 ドアには小さな窓が付いていたが、まだまだ昼間なので鏡になってしまっていて中が見えない。 でも微かに見える電気の明りで店が開いている事がわかる。 人の姿は見えないけど、留守なら書置きがあるだろう。 私はこの店に入りたい気持ちが大きくなっていった。 私はドアの取っ手を引いた。 ドアに付いたベルが綺麗に鳴る。 床は深い色の木が使われていて、白い壁はほとんど商品や装飾であろう絵や置物、植物で埋め尽くされていた。 天井の柔らかいオレンジ色や白のライトが店内を明るくしていた。 奥の方にカウンターがあって、等間隔に並べられた背の高い3つの椅子と端に金属の何も入っていない鳥籠、その反対側の端に時代がわからない様な見慣れない型のレジ、呼び鈴があった。 壁や木のテーブルには木や硝子、金属のアクセサリーやフォトスタンド、ポーチや時計、ハンカチやタオル、文房具…流石万屋、とにかく何でも揃っている様だった。 私が店内を見回していると、カウンターのレジの側にあったドアがガチャと音を立てた。
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