万屋の店主

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音を立てたドアが少し軋んで開いた。 そこから若い男の人の声が聞こえて来た。 「…久しぶりのお客様でしょうか?」 『…久しぶり?』 私はその人の『久しぶり』という言葉に驚いた。 私でも初めて見た店の人が『久しぶり』と言ったのだから。 そんな事をゆっくり考える前にその声の主が姿を見せた。 背が高くて少し色白の肌、軽く結われた肩より下に伸びる少し癖のある黒髪、それに似合う深い紺色の瞳が柔らかく微笑んだ。 和服の様なデザインの瞳と似た紺色の服に店の物と似た様なアクセサリーをいくつか身に着けていた。 歳は20代と言うより18、19といった感じだ。 「いらっしゃいませ。どの様な物を御探しでしょう?」 「ぁ…えと特に…無いですけど…ちょっと見て行こ~かな~って思って…」 私はいつの間にか彼の優しい微笑みに見惚れていた様で言葉に詰まった。 そして私は彼にこの店の事を訊いた。 「貴方は『万屋』の店主さんですか?」 「はい。」 彼は自分が店主だと丁寧に答えた。 「『万屋』ってどんな店なんですか?」 「『お客様のどんな御要望にも必ず御応えします。』と表にある通りです。ここにある物全てお客様が気に入れば、それ相応の御希望の御値段で譲りますし、こんな物が欲しいという御希望も必ず3日以内で承ります。」
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