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「い…ら…いそ…」
視界がぼやける。
「磯村。」
はっとして私は起き上がった。
目の前には三崎くんが立っていた。
一面真っ白な世界で少し眩しいくらいだ。
綿帽子のような白いフワフワしたものが楽しそうに私達の上に舞い降りてくる。
夢の世界の様だと思った。こんな天国なら是非行ってみたいと思った。
「磯村…これ。」
三崎君が何かを握り締めた手を私に差し出した。
あの日と全く同じ。
私はそっと手のひらをお皿の様にし 三崎君が手にしたものを受け止めようとした。
「磯村…これ、受け取ってよ。」
ゆっくりと三崎君は手を開いた。
「???…」
一瞬何が何だかわからなかった…しかし…。
「いっ!いやあああああ!!!!!!!」
私の手のひらにそっと置かれたのは
ひとつまみの針金だった。それがみるみる増殖して、先ほどまでの白の世界を塗り潰してゆく。
「やめて!やめてよぉ!」
私は泣き叫びながら白が黒に染められる事にただ何もできずに座り込んだ。
目の前の三崎君が黒に飲み込まれて行く。
三崎君はただ私を見つめながら立ちすくんだままだった。
「磯村…あいつ達は、おまえらを恨んじゃいない…ただ…」
三崎君が何かを言い終わる前に三崎君の姿は黒の中に消えた。
「やめて…や…。」
少しだけ瞼を開ける感触があった。
長い悪夢から解放された私。
でもそこは一面真っ暗な世界だった。
しかし、ただ一ヶ所灰色に抜かれた窓から 風で揺れる木々の影が見えた…。
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