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私は一生懸命記憶を辿った。
そう言えば私は友達のみっちゃんと遊んでいた。
放置された空き地の水溜まりを見ていた。
水面を優雅に滑る針金のようなアメンボを見ていた。
じきに私はアメンボを手で掬って、拾った容器に入れた。
何匹か捕まえるとアメンボは狭いようでぴょんぴょんと容器の中で跳ねた。
その仕草が気持ち悪くて
私は容器を傾け
もといた水溜まりにアメンボを帰そうとした。
「待って。」
みっちゃんが私の服の袖を引っ張った。
私はアメンボを帰すのは止めアメンボの入った容器を地面に置いた。
容器から水が落ちアメンボは先ほどより窮屈そうだった。
みっちゃんは地面に穴を掘り出した。
私は何となく胸騒ぎを覚えたが何もできず
ただ
みっちゃんの後ろ姿を見ていた…。
「ここに入れて。」
みっちゃんが指差す先には深さ10センチ程の穴が掘られていた。
みっちゃんの指先と爪の間には泥が付着していた。
その姿がさらに私の胸騒ぎを強くさせた。
「入れてどうするの?」
私はみっちゃんに尋ねた。
みっちゃんの表情に苛立ちが見えた。
「いいから。」
私の足元からみっちゃんは容器を掴んで穴の近くに持って行った。
まって
心の中でそうつぶやいたが声には出さなかった。
みっちゃんはザァっと水ごと穴に針金達を流し込んだ。
みっちゃんは穴の中を見つめてる。
「見てよ、登って来たよキモチワルイ。」
私はみっちゃんの横に立ち穴の中を見た。
アメンボが穴から出ようと土の壁を登ってきた。
「キモチワルイ!」
そう言うとみっちゃんは靴で土を穴の中に蹴り入れた。
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