記憶

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やめて… やはり心の中でつぶやいた みっちゃんには届かない。 みっちゃんは穴を土で埋めその上からピンク色の運動靴で踏みつけた。 パンッ パンッ パンッ 何度も執拗に踏みつけた。 私はさっきまで穴のあった地面を見つめた。 私の中で小さないくつかの命を絶った事による背徳感が沸き上がっていた。 きっとあんな針金のような体じゃ 土を掻き分け這い出すことなど不可能だ。 生きたまま埋められる苦しさは私には想像できない…。 息苦しさを感じた。 私はやはり何も言えなかった。 自分の気持ちを伝えてみっちゃんが機嫌を損ねないか、そればかりが気になった。 「ヤエちゃん、今度はこっち。」 みっちゃんがまだ泥がついたままの指で指し示す。 そこを見ると一軒の家が立っていた…。
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