第四章:歯車

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第四章:歯車

この時期から何かと雪奈に当たる事が多くなった。仕事のイライラが募り何もかもがめんどくさくなり投げやりになっていた。それでも雪奈は俺を気遣い毎日笑って話しかけてくれていた。そんな雪奈に対し冷たく接する自分が憎かった。「春になったら一緒に桜見に行きたいね」雪奈が笑顔で言う。しかし俺は、「あぁ…そうだね」っと空返事で返す。雪奈といるのが嫌なんじゃない。むしろ楽だ。しかし今は一人にして欲しかった。雪奈を傷つける自分が嫌だった。「あっ、今度二人で…」「ごめん。もう寝るわ」「そっか…疲れてるもんね…ごめんね…おやすみなさい…」一瞬ちらっと見た雪奈の表情は泣きそうな顔をしながらも必死で笑顔を作っていた。「別に謝る必要ないから。おやすみ」そう言い残し俺は逃げるように寝室へ向かった。布団に入り目をつぶった。奥からは雪奈のすすり泣く声が聞こえてきた。っが聞こえない振りをし強く目を閉じ、俺は寝ようとしていた。
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