序 章

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序 章

小さな庭に、1本の桜の木がある。 もう4月だというのに、その木には1つも花が咲いていない。 早く咲いて散ったわけではない。 この何年も花が咲いていないのだ。 2、3歳くらいの少女が、庭にある桜の木を眺めていた。 「さ~く~ら、さ~く~ら…」 少女は木を見つめながら、童謡の『さくら』を歌い始めた。 少女の声は幼いが透き通るような、綺麗な声をしていた。 歌い始めて数秒後、桜の木の枝の先に花が咲いた。 「わぁ☆」 それを見ていた少女の祖母と母は目が点になっていた。 「この子は強い力を持つよ」 祖母が呟き、少女は母の膝に抱きついていった。 少女が庭から離れた後、桜の花は静かに散っていった。
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