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『ママ、私、一人でクッキー焼いたんだよ!
母の日のプレゼントっ!
早く食べて食べて!ね!?』
甘い甘い匂いがリビングを埋め尽くす。
娘が嬉しそうにはしゃぎながら、平皿にこんもりと盛られた焼きたてのクッキーを差し出した。
さっきから私を台所に寄り付かせなかったのは…
サプライズプレゼントを作ってくれていたのね。
嬉しさと愛しさで自然と笑顔が零れる。
私は二、三度ほどしかクッキーの作り方を教えていないのに、本当に子供は覚えが早い。
娘は今年で小学校四年生。
月日が流れるのは早いものね…などとしみじみ感銘深く考えてしまう。
『一人で作れる様になったの?凄いじゃない!』
娘の優しさが嬉しい半面、歪(いびつ)な形の大量のクッキーに少々苦笑いを浮かべる。
…こんなに食べられるかしら…
愛しい娘の頭を撫でながら少し首を捻った。
『ねー、
早く食べてよママー!』
娘は焦れったさを感じて、
私のスカートの裾をブンブンと揺らした。
あ。
突然、懐かしさで胸がいっぱいになった。
こんな光景を、
私は何処かで見た事がある。
…多分あれは、
私が子供の頃…。
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