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プロローグ
―2月21日―
夜が明ける。
新芽が出ようとする季節の光は、優しく光を放ち、一人の少年の睡眠を妨げる。
「……寒い」
布団の中に隠る少年は、時計を見て時間を確認する。
「時間は?……まだ7時か―――!?7時!!」
ガバッと勢いよく起き上がり、急いで着替える。
今日は月曜日。十七歳の彼はもちろん学校がある。
“やばい、飯食ってる時間がないじゃないか!”
支度を終え、すぐに家を飛び出した。もちろん鍵はちゃんと閉めてある。
学校までは1時間半。
最悪な事に、自転車通学は認められてなく、走るしかない。だが、走ればまだ間に合う時間だ。
しかし、おかしいのは気のせいだろうか?
「あれ~宗ちゃん?やけに早くない」とウィンドブレーカーを着ている、少女に出会った。
その少女の髪はまるで、夕日のごとく綺麗なオレンジ色だった。
彼女は陸上部のキャプテンで、この少年の幼馴染みの秋月沙季(あきつき さき)だ。
沙季は丁度、早朝マラソンを終えたところだった。
「…ひとつ聞くが、今何時だ?」とだんだんと内心不安になっていた。
彼を見た沙季は何か閃いたようにはっとし、
「今六時よ」と一言言って、笑っていた。
それを聞いた少年は“やっぱりか”とため息をつき家に戻ろうとした。
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