プロローグ

1/10
343人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ

プロローグ

―2月21日― 夜が明ける。 新芽が出ようとする季節の光は、優しく光を放ち、一人の少年の睡眠を妨げる。 「……寒い」 布団の中に隠る少年は、時計を見て時間を確認する。 「時間は?……まだ7時か―――!?7時!!」 ガバッと勢いよく起き上がり、急いで着替える。 今日は月曜日。十七歳の彼はもちろん学校がある。 “やばい、飯食ってる時間がないじゃないか!” 支度を終え、すぐに家を飛び出した。もちろん鍵はちゃんと閉めてある。 学校までは1時間半。 最悪な事に、自転車通学は認められてなく、走るしかない。だが、走ればまだ間に合う時間だ。 しかし、おかしいのは気のせいだろうか? 「あれ~宗ちゃん?やけに早くない」とウィンドブレーカーを着ている、少女に出会った。 その少女の髪はまるで、夕日のごとく綺麗なオレンジ色だった。 彼女は陸上部のキャプテンで、この少年の幼馴染みの秋月沙季(あきつき さき)だ。 沙季は丁度、早朝マラソンを終えたところだった。 「…ひとつ聞くが、今何時だ?」とだんだんと内心不安になっていた。 彼を見た沙季は何か閃いたようにはっとし、 「今六時よ」と一言言って、笑っていた。 それを聞いた少年は“やっぱりか”とため息をつき家に戻ろうとした。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!