-第一章-

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-第一章-

俺がこの町に来て四年目を迎え、今年で大学を卒業し、ここで暮らす最後の年・・・ になるはずだったが、俺は来年もここに居る事が現時点と言うより今年の三月、つまり大学三年の学年末成績発表の段階で確定していた。 理由は簡単。授業をサボりまくったせいで単位を落としたからだ。 自業自得の極みと言うべきこの所行に親は激怒、今年からは苦学生。 つまり、生活費から学費に至るまで全て自分でやりくりしなくてはならない。 今ではバイトを掛け持ちして講義の無い時間は金稼ぎの時間。 もちろん単位を落とすくらいの頭しか持ち合わせていない俺に奨学金が降りる事もなく、全額負担。 唯一の救いは、彼女が居ないからデートや何かの時間を考えなくても良い事・・・なんて言うのは余りにも寂しすぎる。 でも、それが事実助かってはいるのも本当だ。だから余計に寂しくなる。 あの日、彼女との最後の夏祭りの後、理由を告げないまま、当然だか、彼女は家に帰って来なかった。 メールをしても、電話をしても出てくれなかった。 数日して、彼女の姉で大学の同級生の衣山有未子(イヤマユミコ)が、俺の部屋に有る静香の荷物を取りにきた。 当時は彼女の服が掛かっていたクローゼットの真ん中に開いた空間を見る度に、一人涙を流していた。 今は涙の出る回数は減ったが、物悲しくなるのは変わらず、そこに服をかけると彼女が二度と帰って来ない気がして、いつ彼女が帰って来ても良い様に今でも空いたままになっている。 それでなくてもこの部屋に居ると彼女を思い出す。 彼女と見たテレビ、彼女と口ずさんだ歌が流れるコンポ、髪を洗うのが苦手な彼女の髪を洗ってあげていた風呂場、朝起きてどっちが先に入るか競争したトイレ、不慣れながら一生懸命彼女が料理を作っていた台所。 その日有った事や他愛ない話や夢を語り有ったリビング、狭く、立て付けが悪く、何度も彼女を抱いたベッド、部屋の至る所に、隅々まで彼女との記憶が散りばめられている。 「はぁー。」 思わず出た溜息がより一層俺の心を淀ませる。 ふと時計を見ると明け方の五時を回っていた。 彼女と別れてからはいつもこんな感じで、彼女を思い出しては時間を忘れ、朝が来る。 気を紛らわす為と、学費を稼ぐ為に朝からバイトを入れているから、もうそろそろ支度をしないと間に合わない。
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