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沈みかけた太陽の日差しが肌に痛く、通り過ぎる人の声と蝉の鳴き声がやけに耳につく。
祭りだ花火だと賑わう世の中で、それを好ましく思わない人種もいる。
その内の一人が俺である事は、俺を知る人間なら誰でも知っている事だ。
人混みを嫌い、華やかなものも目立つ事も嫌いで、隅の方で見ているだけの性格。
別に人と関わるのが嫌いな訳じゃなく、関わり方が解らない。関わらなくても気にしないだけ。
でも、人は不思議なもので、そんな俺にも一年前から、進んでも関わりたいと思う人間がいて、嫌いな筈の夏祭りをその人と行く為に待っている。
しかも、いつもは人を待たせる俺が約束の時間の30分も前に来て待っている。
早く逢いたくて・・・時間が来なければ逢えないのに。
ゆっくり進む時間に苛立ちさえ覚え・・・通り過ぎる人の声と蝉の鳴き声が耳につく。
「ごめん。待たせちゃった?」
そう言いながら青地に白と赤の金魚柄が着いた浴衣に朱色の帯を巻いた彼女が、申し訳なさそうな顔の中少し笑顔を浮かべ、カラコロと黒い下駄を鳴らして、小走りで近寄って来た。
周りの音と人々が消え、俺の目には彼女の姿、耳には、彼女の声しか入らなくなっていた。
「俺も今来たところ。」
彼女に気を使ったわけではなく、俺が来てから5分程しか経っていなかった。
俺の中ではもっと時間が過ぎていたが、彼女を目の前にした瞬間、そんな事はどうでも良くなっていた。
浴衣姿の彼女を見て思う事は少し大人びて見えるのと、馴れないない浴衣の裾を気にしていたり、祭りの雰囲気が濃くなっていくにつれてはしゃぐ子供っぽさが入り交じっていて、可愛く、また綺麗でもあるという事。
夏祭りも悪くない。
ふと、そう思わせるものがある。
思えば今までは夏祭りの人混みと、その中で幸せそうにしている恋人達が羨ましかっただけなのかもしれない。
そもそも、俺と彼女、
衣山静香(イヤマセイカ)
の出会いは俺が一人暮らしの資金を得る為に始めたバイト先で、彼女はバイトの一ヶ月先輩であった。
彼女は俺より三つ下だったが、よく働き仕事も出来た。
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