-序章-

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その時の俺はその感情が何かも解らず、にいたが、 「惚れてんじゃね?」 と言う三明の言葉に妙に納得させられ、それからの俺は彼女に会う為に。 「学食が混んでいた。」 と言って彼女の休憩に合わせてバイト先に行ったり、 「スケジュールを確認しに来た。」 と言って彼女のバイトの終わりに合わせて出没したりしていた。 言うまでも無く全てが嘘で、ただ彼女と会って会話がしたいだけ。 姑息で陰険だが、俺に出来る彼女に近づく最良の方法であった。 それを繰り返す事で彼女との仲は確かに近づいて行った。 そして、一年前の今日二週間前の7月10日に初めて二人で見に行った映画の帰りに、以外にも彼女から告白をされた。 頬を紅く染め、俺の答えを俯きながら待つ仕草が更に可愛く思え、彼女への『好き』という気持ちが本物である事を再認識した。 断る理由なんて俺の中には微塵も無く、それでも素直に好きと言えず、彼女の頭を撫で、 「来年の今日、一周年記念しようね。」 と言った。 格好を着けた訳じゃない。 「俺も好きだよ。」 と言いたかった。 ただ、恥ずかしさに勇気が勝てなかった。 それでも何とか上手くいき、俺たちはバイト先でも公認の仲でここまできた。 「何考えてるの?」 彼女の言葉で現実に引き戻される。 過去も現実には変わらないが・・・思い出すのはよそう。 今は今、目の前にいる彼女を見ていたい。 「浴衣似合うなーって。」 耳の裏をかくのは俺の癖で、照れくさい時についついやってしまう。 彼女もそれを知っていて、その癖が出ると喜んでくれる。 俺が本心を語る瞬間でもあるからだ。
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