-序章-

5/10
前へ
/64ページ
次へ
彼女は恥ずかしそうに笑うと、一瞬だけ寂しそうな顔を見せる。 今のは・・・そう思い彼女をもう一度見るとさっきまでと同じ笑顔に戻っていた。 俺の勘違いだろうか・・・。 もしかしたら彼女は余り楽しんでないのかもしれない。 よく恋愛の中に刺激を求める人がいる。 彼女は以外に、そのタイプなのかも知れない。 俺は平穏とゆとりを求めるタイプで、その人と居ると楽しいや、明るくなれるより、落ち着く、優しい気持ちになれるかがポイントになる。 その点彼女との生活は常日頃のんびりしていて、お互い寝たい時間まで寝て、学生の俺は大学、定時制に通う彼女はバイトに向かう。 早起きした時はのんびり俺は苦めのホットコーヒー、彼女はホットミルクに砂糖を入れたのをチビチビ飲む。 デートは基本食材の買い出しで、二人が休みの日に一日かけてゆっくり行う。 たまに今日の様に時間をずらして家を出て待ち合わせをし、一般的なデートの様にしたりする。 俺は彼女とのそんな同棲生活に満足していて、こんなデートの時は待っている時無性に会いたくなる。 とっくにベタ惚れ以上になっている。 「また何か考えてる?」 下唇をむき出してそれを自分の人差し指で数回軽く弾これは彼女の癖で、寂しい時やわざといじけてみせる時によくやる。 元々は下唇をむき出すだけだったが、それをよくやる彼女に 「またやってる」 と言いながら俺が唇を弾いていたのが、いつの間にか自分で弾くようになっていた。 この癖は俺と彼女が一緒にいる証拠。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加