-序章-

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中には無地も有るらしいが、選べるのは一種類だけと彼女も解っているから悩んでいるのだろう。 どうせ食ったら袋は捨てるのに・・・もしかして袋は持ち帰り? 彼女なら有り得る。 「どれにする?」 俺がそう聞くと彼女ははっと我に返ったよいな顔をしてから慌てて袋をに目をやる。 「見てただけ?」 また癖が出る。 どうやら図星らしい。 選んでいたわけではなく、絵柄を見て堪能していたらしい。 彼女は一度悩むと時間がかかる。 前にファミレスに行った時、ドリアかグラタンで三十分ほどまよって、注文したのはピラフ。 訳わかんね。 彼女曰く共通点はエビらしい。 いきなりブッ飛んだ結論に達する為、下手に手出しができない。 今迷っているのは、さっきから交互に見ているアニメキャラクターの熊と猫だろう。 迷ったあげく鶏と予想をたててみる。 「ゆっくり選びな。」 俺の声に一度だけ頷く彼女。 彼女の返事は、大体頷くか、首を振るか、唇を突き出すかのどれかで、以外に解りやすい。 今回は結構早く、10分程経った頃にシャツを引っ張る。 どうやら決まったらしく、オヤジのとこに行くと、手に持った浴衣とお揃いの巾着から財布を出す。 「こんくらい奢るよ。どれ?」 遠慮しがちに彼女が指さしたのは、青い無地の袋。 訳わかんね。 迷っていたのは熊か猫かだったらしいが結局無地で、下地の色もバラバラだった。 今回は共通点も解らない。 でもそれが気に入ったのなら何も言わないでで綿菓子を買う。 大事そうに綿菓子を抱え笑顔が耐えない彼女は、見ている俺も笑顔にさせる。 その後も同じ様な調子でポテト、たこ焼き、杏飴、チョコバナナ、フランクフルトと店を周り、かき氷の俺は抹茶、彼女はスカイブルーを買って祭の端にある神社の横、ちょうど二人が座れる位の岩に腰をかける。
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