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「わかりました。やってみましょう。マスター、奥の部屋貸してくれる?」
「もちろんよ。さぁ、先生、こっちにいらして。坊やはここでちょっと待っててね」
立ち上がった清水と目が合い、クスリと笑われ、護はカッと顔が赤くなるのを自覚した。
三人はカウンター横のドアから中へと入っていく。
一人取り残された護は、置かれたままの名刺を手にした。
取り立てて変わったデザインの名刺ではない。でも何故か清水のことが気になった。
理由などない。
初めて会った相手だし、精神科医ともこれまで無縁で過ごしてきた。
年齢だって違う。見た目ではおそらく三十前後だろう。
しばらくするとマスターだけが戻ってきた。
「ジュースのお替わりは? 坊や」
「坊やはやめてください。清宮護です」
「きよみやまもる? あら、あんたにぴったりってカンジね」
「マスターは何ておっしゃるんですか?」
「アタシはトワコよ。マスターが嫌ならトワちゃんて呼んでね」
「…それ、本名じゃありませんよね?」
「いやぁね、マモルちゃんたら! 本当の名前なんて教えるはずないでしょ。教えるのはアタシの大事なダーリンだけ」
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