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「ハウスキーパー、やらせてください!」
護は応接室のドアを勢いよく開け放っていた。
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自宅のある2丁目から4丁目までは、徒歩で15分ほどかかる。
まだ日差しはそれ程強くはないが、さすがに額に汗が滲んでいた。
護は真っ白なハンカチで額を拭うと、目の前に聳える高い塀を見上げた。
(こんなに近くまで来たのって、初めてかもしれない)
小学生の頃同級生に連れられて、近くまで来た記憶はある。そんな懐かしい思い出が甦った。
門柱には表札らしきものは配されていない。
でもここを借りた人が朽木と言う名字であることは、不動産屋の村井から聞かされている。護が今日来ることも、村井から連絡してくれる手筈になっている。
門柱にあるインターホンを押す。ジリジリと背中を炙る太陽光線に、ジワジワ汗が浮いてくる。
「はい」
ようやく返事があり、護はホッとした。
「清宮と言います。村井さんのご紹介でアルバイトさせていただくことになった者です」
「ああ、ハウスキーパーか」
門柱の間の綺麗なレリーフが施された門扉が、音もなく内側へと開いていく。
(凄い。電動なんだ)
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