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朽木一太朗は眠れずにいた。ベッドで寝返りを打つたび、かえって目が冴えていく。
魔族は人間のように毎晩睡眠など取らずとも、十日位は平気なのだが、人間界で暮らすようになって、生活習慣まで感化されてしまったのか、毎晩眠るのが当たり前になってしまっていた。
いつもならとっくに眠りに就いているはずなのに、今夜はすでに深夜三時を回っている。
「…何なんだ? イラついてる」
一太朗は眠るのを諦めてベッドを出ると、静まり返った階下へと足を向けた。
居間の前を通りかかると中から物音がして、一太朗はそのドアを開けた。
屋敷には結界が張られていて、無断侵入することはできない。入り込めるのは、結界を張ったレイジ以上に力のあるやつだけだ。人間界にそんなやつはいない。
またラミたちが下らない輩を寄越したにしては、静か過ぎる。
あの妹たちはやたら派手なパフォーマンスが大好きだから、密かに寝首を掻くような真似はしない。力を誇示し、相手が屈服する姿を笑いたいからだ。
「誰だ?」
物音のするキッチンの明かりを灯すと、そこにいたのはユーゴだった。
「どうした?」
ユーゴは冷蔵庫の前に座り込んでいた。
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