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門扉から玄関まではレンガのアプローチが緩い弧を描いていた。アプローチの周囲は荒れ果てており、庭木も雑草も我が物顔で蔓延っている。
(こんなに荒れさせたままで人に貸してお金がもらえるなんて、不動産屋って楽な仕事なんだ…)
アプローチの先に現れた屋敷は二階建てで、外壁は白、窓枠は緑色で所々蔦が壁面をよじ登っていた。
護が屋敷の外観を興味深げに観察していると、目前の玄関ドアが開いた。
「こんにちは。清宮です」
護は中からドアを開けた人物を見上げた。
物凄い大男だったからだ。2メートルはさすがにないかもしれないが、限りなくそれに近い。
「…あの」
「どうぞ」
大男は体を脇に寄せ、護を中へと招いた。
「朽木さんですか?」
「それ以外の何だと思ったんだ?」
「何とも思いませんが、確認したかっただけです」
「では確認できたな?」
「はい」
「中を案内しよう」
朽木は護に背を向け、廊下を進んで行く。そのとき朽木の髪がやや赤味がかっていて、肩先より長いそれをうなじで一つに括っているのがわかった。男性の長髪は初めて見る。
「ここがダイニングキッチン、その向こうが居間だ」
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