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(そうだ、丸岡先生、言ってたよな。ムードが大事だって…)
でも具体的に何をどうすればいいのか、さっぱりわからない。
自分がもし女の子だったなら、相手を誉めたり甘えたりすればいいのかもしれないが、考えたら大澤は女の子に興味がないのだから、その方法は根本的に間違っている。
(じゃあ先生がその気になるムードって、何?)
考えているうち、潤はいつしか夢の世界にいた。
適度な揺れと、心地いい音楽。それに逆らうのをやめたとたん、寝入っていた。
ハンドルを握る大澤は、すやすや眠る潤の顔を横目で捉えるたび、その柔らかで無防備な唇に、思う存分しゃぶりつきたい衝動と戦っていた。
(こいつ、ちっともわかってねぇよな?)
大澤にとって潤の存在自体が、日々耐え難い誘惑に他ならない。
丸岡に偉そうなことを言ったのは、自分自身への枷のつもりだった。
(耐えろよ。いじめて泣かせたいだなんて、悪趣味なことはもうやめたんだよな? こいつのこと、大事なんだよな? 嫌われたくないんだよな?)
自分自身の中の天使の部分が、そう囁く。
(バカ、こいつだってホントはして欲しくて、待ってんだろ? 好きならやっちまえって)
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