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悪魔の部分がそう唆す。
「…やっぱ、実家はやめとくかな…」
大澤は今日、潤を自分の生まれ故郷に連れて行くつもりだった。
ゲイであることがバレてから、何となく足が遠退いていた場所だが、だからこそそこに潤を連れて帰ることは特別な意味を有する。
せめてこんなことで、お前は今まで付き合ってきたやつらとは違うんだ、をアピールしたいのだが、問題はその先だ。
実は、大澤の実家は地元でもかなり大きな老舗旅館をやっている。
両親や兄夫婦が自分を受け入れ、泊まっていけなんてことになったら、おそらく自分の中の天使など、鍵付きの箱にぶち込んで裏山に埋めてしまうだろう。
(よし、泊まらずに帰る。実家には顔を出すだけだ。第一、オヤジが認めてくれるとは思えねぇしな…)
車は中央道をひたすら西へと向かう。
フロントガラスに雄大な富士の山が見えてきた。
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