First Love Affair

6/28
1276人が本棚に入れています
本棚に追加
/60ページ
 うなだれて、機嫌を伺うかのようにチラリと上目遣いを寄越す潤に、大澤は思わず叫んでしまいそうだった。 (だからそんな顔すんじゃねぇ! 頼むから、おれを煽るな)  ぷいっと顔を背け、さっさと歩き出してしまった大澤の後を、潤はふてくされてついて行った。 (何だよ。人がごめん、て言ってるのに、無視かよ?) 「おれ、トイレ行ってくる」  離れてしまった背中にそう叫び、潤はムカつきを堪えながらトイレに向かった。  用を足し、顔を洗ってすっきりして表に出ると、大澤は立ったまま喫煙所で紫煙をくゆらせていた。  通りすがりの若い女の子たちは、そんな大澤を振り返って見ている。 「ちょっとカッコいいよね?」  そんな一言が聞こえ、潤は途端に相好を崩した。 (へへっ、悪いけどあんたじゃだめなんだよね、あの人には)  ニコニコしながら大澤の元へと駆け寄り、 「腹減った。何か食べよ」 と、大澤の腕に絡みつく潤は、どれだけ自分が大澤を悩ませているかなど、想像もしていなかった。
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!