1276人が本棚に入れています
本棚に追加
「また、そんな顔しやがって…」
大澤は取り出したビールを流し台の上に置くと、キッチンから出て行く。洗面所から水音と、ガラガラうがいする音が聞こえてきた。
(最初から素直にやればいいんだよ)
潤は作ったおかずを居間のテーブルへと運ぶ。
(3週間振りの土日休みだったんだぞ。おれだって文句言いたくなるよ)
潤は先月から今回の連休を確保し、楽しみにしていた。特にしたいことがあったわけではないが、この2ヵ月、デートらしいこともしていない。精々、近所の焼き肉屋に出かける程度だ。
だからあえて大澤の夜勤のローテーションを考慮して、明日からの休みを取ったと言うのに、こともあろうか大澤は、その貴重な休みを他の外科医と代わってしまったのだ。
夜勤明けでそれを聞かされた潤は、思い切り不満げな顔をしてしまった。
大人気なかったと反省し、夕飯を作りに来たはいいが、顔を見たらまたムカついてしまった。
潤がキッチンに戻り、電気釜の蓋を開けたところで、後ろから大澤の大きな体が抱きついてきた。
「悪かった。だから機嫌直せよ」
ぎゅっと抱きしめられ、囁きと温かな唇が耳の後ろに落とされた。
最初のコメントを投稿しよう!