消えない傷

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あの日から悪夢のような日々が始まった。 監視される毎日。囚人のような日々。 いつもやつは私を見ていた。 私から自由が消えた いままでの生活は一変した。 友達が通りすがっても見てみぬふりをした。 自分はいつも見られている…。 軽率な行動はできなかった。 もし、何か奴の気に触ることがあれば それだけで叩かれた。 殴られた。 蹴られもした。 それでも愛してると奴が囁く。 言ってわからないなら叩いてしつけなければと奴は言う。 それがおまえのためなのだからと。 毎日身体中に痣が増えていった。 心に傷が増えていった。 涙も増えていった。 自己満足な愛… やがて、私は心から笑わなくなった。 やがて、私は口数が減った。 やがて、私は飯の味を忘れた。 やがて、私は… 全てに置いての強要。 それでも私は奴から離れることはできなかった。 気が済むまで叩いた奴は涙を流して哀願した。 許してくれと私を抱きしめた。 愛していると私を抱きしめた。 その度引き留められる思い。 私には勇気がなかった。 私が離れたら死んでしまうのでは?と疑問が走る。 殺したいほど憎かった。 それでも離れることができなかった。 殺してやると思えても、すぐにその感情は奴の手によって消された。やがて、時がたち 奴の方から離れていった。 今では たくさん笑うようになった。 たくさん話すようになった。 たくさん食べるようになった。 たくさん友達もできた。 たくさんのあざも消えた。 しかし、ふとした拍子によみがえる記憶。 奴と離れた今でも… 私の日常に奴の影が潜む…
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