5人が本棚に入れています
本棚に追加
“彼”とあたしが出会ったのはまだ桜が満開の春の頃だった。
あたしはその時高校生になったばかりで、まだ中学生気分が抜けてなくてすっかり春休みボケしていた。
中学は徒歩で10分程度歩けばすぐに着く場所にあった。ところが高校は違ったのだ。
あたしの通う高校はバスで駅まで行って駅から電車に揺られて駅からまた徒歩…というややこしい場所にあるのだ。
田舎の町には高校が少なく、あったとしても男子校だったり進学校だったり遠い場所にあったりと…あたしはやむを得なく近場の駅から通える学校を選択したのだ。
しかしそれは甘い選択だったかもしれない。
あたしは春休みの内にウチのマンションのすぐ傍にバス停がある事を知っていて多少寝坊しても大丈夫だろう、と鷹をくくってた。
だけどあたしがダラダラと春休みを過ごしてる間にそのバス停は使う人が少なくて撤去されててあたしはそれは知らなかったのだ。
よってその日はバスの時間に合わせて家を出たのになかった為にあたしはパニックに陥ってしまった。
すぐに母さんに連絡したら市役所に確認してくれるとの事でホッとしたものの、高校生活最初から遅刻するかもしれないという不安が胸に広がった。
失敗したなぁと後悔で悶々としてると母さんから連絡が来てマンション下のバス停は運動公園に移動してしまったようだった。
くっそう…何で運動公園に移動なんかっ!
ムシャクシャしながらあたしは運動公園に向かって歩きだした。
運動公園は小さな遊具と芝生があって小さい公園みたいな場所。でも自転車を乗り回せるサイクリングコースとか大きなグラウンドがあって運動出来る最適な場所。
でもそこには小さい頃以降行ってなくて相変わらずさびれた遊具のままなんだろうなーとか思いながら歩いていってあたしは絶句してしまった。
いつの間に高速道路なんか出来たんだろ…こんなに広い道路なんてあったっけ?
確実に時間が進んでるんだなぁと小さくショックを受けた。
バス停はどうやら乗り換えの場所になったみたいで大きな駐車場みたいになってた。
ちょっとは活性化してきたのかな、この町‥
何て考えてバス停の傍の小さなベンチに腰をかけた。時計を見ると何とか遅刻は免れそうだと安心出来た。
そしてあたしは“彼”を見つけた。
最初のコメントを投稿しよう!