1572人が本棚に入れています
本棚に追加
「沙羅…」
ハッとして振り返ると、もう使われていない姉のブラウスを手に持った湊斗がいた。
「ご、ごめんっ…さっきあんなに泣いたのにねっ」
沙羅は涙を拭い、無理矢理笑顔を作る。
「あーぁ…化粧全部落ちちゃったぁっ」
「無理して笑わなくていいよ。泣きたいなら泣けばいい」
そんな沙羅の頭を、湊斗はポンポンと優しく撫でた。
「……っ」
止めどなく流れ落ちる涙。
これ以上、湊斗に迷惑をかけたくないのに。
涙が枯れるまで泣く…とよく聞くけれど。
いつになったら枯れるのかな?
「南都っ……」
ここにはいないのに、思わず溢れ出た名前…
その言葉を発した時、湊斗の手がピタッと止まった。
最初のコメントを投稿しよう!