ⅩⅠ

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「沙羅…」 ハッとして振り返ると、もう使われていない姉のブラウスを手に持った湊斗がいた。 「ご、ごめんっ…さっきあんなに泣いたのにねっ」 沙羅は涙を拭い、無理矢理笑顔を作る。 「あーぁ…化粧全部落ちちゃったぁっ」 「無理して笑わなくていいよ。泣きたいなら泣けばいい」 そんな沙羅の頭を、湊斗はポンポンと優しく撫でた。 「……っ」 止めどなく流れ落ちる涙。 これ以上、湊斗に迷惑をかけたくないのに。 涙が枯れるまで泣く…とよく聞くけれど。 いつになったら枯れるのかな? 「南都っ……」 ここにはいないのに、思わず溢れ出た名前… その言葉を発した時、湊斗の手がピタッと止まった。
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