ⅩⅡ

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「…連絡とれないの」 綾瀬と話したあとメールを送ったが返信はなく、沙羅は眠れぬ夜を過ごしたのだった… 「あいつ…」 侑希は、はぁ…と重く溜め息を漏らした。 何か事情を知っていそうな、そんな素振り。 南都の事、何か知ってるの? そう尋ねようと口を開けば、それは背中からきた衝撃で遮られてしまった。 温かい腕の中に収まる体。 「無事で……良かったぁ」 背後から抱きついてきた薫太は安堵の息を漏らす。 震える腕。 「心配かけてごめんね…」 沙羅は自分を強く抱き締める薫太の腕をぎゅっと握った。 ふと顔を上げると、湊斗が2人を優しい眼差しで見つめている… いつもと同じ光景。 ただ一つ、南都がいないという事を除けば。 南都はこの日、学校には現れなかった。
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