ⅩⅡ

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頬を涙が伝う。 すると突然、南都の動きがピタリと止まった。 沙羅の頭の両脇に手をついて体を起こし、自分の真下にいる沙羅を真っ直ぐに見つめている。 相変わらず冷めた視線。 「沙羅…」 緊迫した空気が流れる中、南都は静かな口調で告げた。 「別れよう」 その瞬間、時が止まってしまった気がした。 南都以外何も見えない、何も聞こえない。 全身から一気に血の気が引いたような感覚に襲われる。 何か言わなきゃ。 こんな終わり方いやだ! …そう思うのに、喉の奥に詰まって何も出て来てはくれない。 別れよう。 ただ一言、そう告げた南都は立ち上り、沙羅に背を向けた。
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