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「あたし、幸せだったよ…?」
沙羅は覚悟を決め、最後に一番伝えたい思いを口にした。
溢れる涙を必死に堪え微笑む。
どうせなら…笑顔でさよならしたいから。
例え、南都が見てくれていなくても。
乱れた衣服を直し、部屋から出るためドアノブに手をかけた時…南都に、呼ばれた気がした。
だけど決して振り返らない。
顔を見たら…きっと諦めがつかなくなるから。
「さよなら…」
沙羅は南都の顔を見ないように後ろ手にドアを閉める。
パタン…と音を立てて扉が閉まる間際、呟くように小さい声が静寂の中に切なく響いた。
「ごめん……」
沙羅には聞こえなかった、最後の一言。
南都は沙羅の出ていった扉を、しばらく眺めていた。
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