15/18

1572人が本棚に入れています
本棚に追加
/282ページ
綾瀬が去った直後、侑希は壁に寄り掛かり、その場にずるずるとしゃがみこんだ。 「はぁ…」 本当に何もしなければいいが… もう誰も傷付いて欲しくない。 誰も失いたくない。 侑希は重い溜め息と共に、過去の出来事を思い返していた。 守れなかった、あの人を。 「大丈夫?」 突如、頭上から響く優しい声。 それと同時にふわっと頭を撫でられる。 「長谷川くん…」 驚いて顔を上げると、そこにいたのは湊斗だった。 その後方には薫太の姿も。 「もしかして今の会話、聞いてた?」 「…途中からね」 「そう…」 周りなんて、全然見えてなかったな。 それだけ必死だった自分が、少しだけ可笑しく思う。 侑希はニコッと微笑んで立ち上がった。 「屋上、行こっか」 …強い決意を、胸に秘めて。
/282ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1572人が本棚に入れています
本棚に追加