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綾瀬が去った直後、侑希は壁に寄り掛かり、その場にずるずるとしゃがみこんだ。
「はぁ…」
本当に何もしなければいいが…
もう誰も傷付いて欲しくない。
誰も失いたくない。
侑希は重い溜め息と共に、過去の出来事を思い返していた。
守れなかった、あの人を。
「大丈夫?」
突如、頭上から響く優しい声。
それと同時にふわっと頭を撫でられる。
「長谷川くん…」
驚いて顔を上げると、そこにいたのは湊斗だった。
その後方には薫太の姿も。
「もしかして今の会話、聞いてた?」
「…途中からね」
「そう…」
周りなんて、全然見えてなかったな。
それだけ必死だった自分が、少しだけ可笑しく思う。
侑希はニコッと微笑んで立ち上がった。
「屋上、行こっか」
…強い決意を、胸に秘めて。
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