-§記憶①§-

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「誰…ですか?」 立っていたのは、1人の男だった。 自分と同じぐらいの歳だろうか。 「杏里...何で...」 男は、杏里の声が聞こえていないかのようにどんどん近付いて来る...。 「こ、来ないで!!」 誰かは、分からないが... 記憶を無くす前の自分が、拒否しているのが何となく分かった。 「杏里...やっぱり...」 ―ガラッ― 扉が再び開いた。 「な..何で、あなたが..」 入って来たのは、母親だと思われるおばさんだった。 男を見るなり、一気に顔色が変わった。 「こんにちは...」 男は、呑気に挨拶をしている。 「出て行って...出て行って!!!」 おばさんの顔は、怒っているような悲しいような表情だったが、必死なのは確かだった。 「杏里、また来るな...」 そう言うと、男は出て行った。
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