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17歳の夏の終わりの、ある日曜日。
明け方頃、自宅の近くにある小さなブランコと砂場だけがある公園に向かって、真由は必死に走っていた。
小さいスポーツバッグには、簡単な着替えと親が積み立ててくれた預金通帳。そして、別れ際に兄がくれたパスポートだけ。
笠原真由は、彼が待つ公園へとひたすら走っていた。
彼は、私を自由にしてくれる人。
その自由な生き方に惹かれた。
「二人で生きていこう」と、
優しく言ってくれた。
ピアノなんてなくても、そのままの私を好きだと言ってくれた。
あの時、感じた。
この人こそが、運命を変えてくれる人だと……。
未来へと導いてくれる人にちがいない、と。
タカシ。
あなたについていく…。
真由はそう強く思いながら、躍る心を抑えきれず、彼の元へと走っていた。
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