3.

4/12
前へ
/140ページ
次へ
  そのあと必要最低限なものだけを買ったはずなのに、それでも凄くたくさんの袋を抱えて帰った。 「…あれ?」 ナルちゃんがアパートのポストを確認してるとき、私はポストの表札に目が行った。 「成瀬…?」 「そ。俺の名字。何を今更」 …凄い偶然。 たまたまナルちゃんなんてあだ名つけたけど、まさか名字にナルがつくとは…… 「え、何。お前俺の名字知ってて呼んでたんじゃないの?」 私が初めて知った、と返事をすれば、ナルちゃんは感情がいまいち読み取れない、単調な口調で聞き返してきた。 「だって初対面じゃない。ストーカーとか追っかけとかとでも思ったの?」 「うん」 冗談で言ったつもりなのに、ナルちゃんは真面目な顔のまま答えた。 …って言ったって、ナルちゃんは常に無表情なんだけど。 「まぁ、そんだけの美形なら追っかけくらいいそうね」 私は苦笑気味に返すと玄関のドアを開ける。 「じゃあ、下の名前は?」 なんとなく気になった。 聞いたってあだ名を替えるつもりはないけど。 「…久志」    
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

960人が本棚に入れています
本棚に追加