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  久志…か。 「私が好きだった小説の主人公と名前が一緒っ」 「ふーん」 私が瞳を輝かせば、ナルちゃんは横目と短い返事だけを返した。 素敵な名前だけど、やっぱり“ナルちゃん”が一番かな。 「あ、私はね徳永美咲」 そう言えば、まだ自分の名前を教えてなかった。 「…徳永美咲?」 「そうよ」 私の言葉に反応をしたナルちゃんは、少しだけ表情がやわらかくなった気がした。 「じゃあ、“みぃ”な」 「え、何が?」 「…お前のあだ名」 「えー…」 みぃなんて猫みたい。 昔はそう呼ばれていたけど、それは遠い昔のことだもの。 『みぃ』 あの人を思い出した。 彼女はずっと私から消えない心の傷。 「みぃ?」 「…あ、うん。好きに呼んで」 美咲と呼ばれるよりマシか。 だって名前で呼ばれたらあの人……圭吾のこと思い出しちゃうから。 「みぃ、これ片付けよ」  
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