960人が本棚に入れています
本棚に追加
久志…か。
「私が好きだった小説の主人公と名前が一緒っ」
「ふーん」
私が瞳を輝かせば、ナルちゃんは横目と短い返事だけを返した。
素敵な名前だけど、やっぱり“ナルちゃん”が一番かな。
「あ、私はね徳永美咲」
そう言えば、まだ自分の名前を教えてなかった。
「…徳永美咲?」
「そうよ」
私の言葉に反応をしたナルちゃんは、少しだけ表情がやわらかくなった気がした。
「じゃあ、“みぃ”な」
「え、何が?」
「…お前のあだ名」
「えー…」
みぃなんて猫みたい。
昔はそう呼ばれていたけど、それは遠い昔のことだもの。
『みぃ』
あの人を思い出した。
彼女はずっと私から消えない心の傷。
「みぃ?」
「…あ、うん。好きに呼んで」
美咲と呼ばれるよりマシか。
だって名前で呼ばれたらあの人……圭吾のこと思い出しちゃうから。
「みぃ、これ片付けよ」
最初のコメントを投稿しよう!