3.

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  『美咲』 彼の。 彼の声が聞こえた気がした。 ナルちゃんの声と重なって。 「…っ…その呼び方やめて」 溢れそうになる熱いものを堪えるように、私は唇を噛み締める。 忘れようとすればする程、思い出してしまう愛しい人。 「あぁ……ごめん」 ナルちゃんは申し訳なさそうに頷くと、私の唇に指を当てた。 「…なに」 「唇、切れるから」 噛むなら俺の指噛め、とナルちゃんは私の唇に指を押しつける。 「え…? だ、大丈夫だから」 私はあわてて口を開いた。 ナルちゃんの指を噛むなんてとんでもない。 「そ。じゃ飯にしようよ」 ナルちゃんは私の手と袋を取って、ゆっくり歩きだした。 この人は人の気持ちが読めるのだろうか。 ナルちゃんは居心地がいい。 言葉も行動も癒される。 「今日はカジキ鮪の煮付けだよ」 あとケーキ。 そう付け足して、ナルちゃんの横に並んだ。                    
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